日本の教会の境界

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 日本には、偽物の教会がたくさんある。それは結婚式場のことだ。

ウエディング情報の大手・ゼクシィのサイトで、チャペル挙式ができる会場を検索すると、

首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)だけで123件の結婚式場がヒットする。

ざっと確認したところ、そのうち日曜礼拝が行われている教会は1件しかなかった。

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「ウエディングホテル・ベルクラシック東京」や「アートグレイス・ウエディングコースト」のように、

結婚式専門の独立型チャペルだと明らかに判る名前を名乗っているのはまだいい。

味わい深いのは、「セント・ラファエロ大聖堂」「セントグレース大聖堂」など、

あたかも本物の教会であるかのような名前を冠した結婚式場の存在だ。

「大聖堂」という大げさ過ぎるネーミングのおかげで、偽物だとすぐわかるのだ。

立派な建物の上に堂々と掲げられた十字架が気の毒になってくる。

また、真偽のほどは定かではないが電車の中吊りで、

「英国の古い教会を移築」と謳っている結婚式場の広告を見たこともある。

たしかに重厚な外観で、建物だけを見ているぶんにはまるで外国のようだった。

だが、本物に近づけようとすればするほど、ウソ臭さがにじみ出てくるから不思議である。

平たい顔した参列者や、隣接するチマチマした日本の家並みから、荘厳な教会が浮いてしまうのだ。

9割以上が偽物の教会!?

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でも、多くの人はそんなことにはお構いなしである。

何の疑問を持たずに、偽物の教会で永遠の愛を誓い合うのが日本人なのだ。

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ゼクシィのサイトで紹介されている全国のチャペルウエディング会場を合計すると、

北海道が20件、東北58件、茨城・栃木・群馬70件、北陸・甲信越・静岡129件、

東海135件、関西140件、中国56件、四国36件、九州107件、沖縄18件で、全部で892件にもなる。

首都圏123件のうち本物が1件しかなかったことから考えると、

おそらく9割以上が偽物の教会だと思われる。

すごい数である。あまりの数に、不謹慎とか罰当たりという言葉が吹っ飛ぶ感じだ。

海外のキリスト教国や一神教の国から日本にやってくる観光客は、

どう思っているのだろうか。気になるところである。

本物の教会とは

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一方で、日本には本物の教会も沢山ある。

カトリック教会の数は、カトリック中央協議会の2014年の統計によると990。

日本最大のキリスト教団体である日本基督教団のサイトの統計では、

プロテスタント教会の数は全国で1725(2011年度)。合計で2715教会。

カトリック中央協議会にも日本基督教団にも属さないその他の教会も含めると、

たぶん3000以上の本物の教会が日本には存在していると思われる。

しかし、文化庁が毎年発表している宗教年鑑平成26年版によると、

日本の総人口1億2685万人のうち、キリスト教系の信者の数は約295万人。

総人口の3%にも満たない。

そう、国民の3%以下しかキリスト教の信者はいないのに、日本人は教会が本当に大好きだ。

正確には、教会行事が大好きだと言った方がいいだろう。

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その2大イベントは、クリスマスとウエディング。

イエス・キリストの降誕を待ち望む厳かな聖夜を、単なるパーティデーとしてはしゃぎ、

人生の門出である結婚式を、偽物の教会で盛大に祝う。
 

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宗教行事をただのイベントとして楽しむなんて、「不謹慎」だとか、「節操がない」という人もいると思う。

でも、“パワースポット巡り”と称して寺社仏閣を巡るのだって不謹慎といえば不謹慎だし、

クリスマスの1週間後に神社へ初詣に行くのが無節操といえば、その通り。

ただ、もともと宗教行事が、苦しい生活を送る庶民に希望を与え救済するために行われてきたという側面を考えると、

どの宗教の行事も否定せずありがたく楽しむのは、生きていくための知恵ともいえる。

宗教、宗派の違いなんて細かいことにはこだわらない。

日本人は懐が深いのである。


作成者:中村桂

 







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