写経にハマる女子急増!? イマドキの気軽な写経体験とは
写経にハマる女子急増!?
イマドキの気軽な写経体験とは
写真:PhotoAC
突然だが、みなさんはなにか趣味と言えるものを持っているだろうか。
著者には、これといって趣味がない。
楽しみと言えば、ピーナッツチョコ(大好き)を食べることくらい。
寝そべってピーナッツチョコをむさぼり食う、アラフォー女。
そこにはもはや危機感しかない。
じつは今年こそ、ステキな趣味を見つけたいと思っているのだ。
「○○にハマってるんです」とまぶしい笑顔で言ってみたい。
ピーナッツチョコを食べながらYouTube見てゴロゴロする日々には、もうさよならだ。
参考までに、後輩A子に趣味について聞いてみようと思い立った。
A子は、著者の周囲には数少ない、ステキ女子の一人。
なにか女子らしい趣味を持っているにちがいない。
著者 「ねえA子、今なにかハマってることない?」
A子 「ハマってることですか?うーん、今は写経ですかね~」
しゃ、写経?
石原さとみ似のかわいい顔で、とんでもないことを言い出す。
写経って、お坊さんやお年寄りがやるものじゃないの??
A子 「いやいや、今は若い女子も結構やっていますよ。
有名なお寺の写経会なんて、女の子いっぱい参加しますし
そうなんだ。
でもさ、もっとこう、女子力高そうな趣味を期待してたんですけど。
なにがそんなに魅力なのか聞いてみると、A子は熱心に語りだす。
A子 「気持ちが落ち着いておだやかになるし、書き終えたあとの達成感があるんですよ。
なんかスッキリしますしね、心のデトックスみたいな。
ヨガみたいな感覚ですかね?
そうだ、B子さんも最近始めたって言ってました」
お寺とはおおよそ縁のなさそうなギャル系B子まで!?
そんなに流行ってるの?
写経、気になる!!
著者 「でもさ、申し込みとか面倒じゃない?あんまり遠いお寺に行くのも大変だし
A子 「大丈夫、ダウンロードできますから」
著者 「は?」
A子 「ダウンロードできちゃうんです、だから自宅でできますよ。
先輩みたいな人でもできます!」
・・・最後の一言はどういう意味でしょうか。
このあと、勢いづいたA子から「一緒にやりましょう!」と強引に誘われ、急きょ写経体験することに。
趣味探しの旅が、まさかの写経にたどりついたのである。
そして、A子宅で早速パソコンをひらく。
「ダウンロード 写経」で検索すると、表示されるサイトがたくさん。
本当にダウンロードできるのだ。
般若心経、PDF化されています・・・。
インターネット社会に不可能などないのだと、しみじみ感じた。
実際に印刷してみるとこんなふうになる。
お手本が薄墨で書いたように印刷されるので、なぞっていくだけでOKだ。
これなら初心者にも取り組みやすい。
写経と言えば、墨をすって筆で書くイメージだが、書きなれた筆記具でいいらしい。
A子もふだんは筆ペンだし、鉛筆やボールペンで書く人もいるとか。
「じゃあ、始めましょう」おごそかなA子の言葉で、写経スタート。
正直、このくらいの文字数なら一気に書けると思っていた。
しかしこれが案外難しい。
知らない漢字もたくさんあるし、丁寧に書かなければと思うとなかなか進まないのだ。
だがいつのまにか没頭し、後半はすごい集中力で書き上げた。
そして最後に願文を書くという欄がある。
はて何を書こうか?
著者 「これ、お金持ちになれますようにとかそういうこと?」
A子 「七夕じゃないんだから・・・家内安全とか、心願成就とか書くんですよ」
・・・なるほど、失礼しました。
ジャーン、完成!
お手本をなぞっているとはいえ、隠しきれない字の汚さ。
いいのだ、心をこめて書くことが重要だ。
特別な道具もいらないし、思っていたよりずっと手軽。
なんだか思いの外楽しかったのである。
今回写経した般若心経は、玄奘というお坊さんがインドから持ち帰った経文のひとつだ。
玄奘という名にピンとこない人も、西遊記に出てくる三蔵法師のことだと言われれば分かりやすいだろう。
猿や豚、河童をお供に旅したというのは創作だが、玄奘がインドに向かったのは実話だ。
玄奘がインドで得た経文は翻訳され、やがて海を渡って日本にやってきた。
印刷機械などなかった時代、お坊さんたちは仏の教えを人々に伝えるため、貴重な経文を一心に書き写した。
それが写経のはじまりだ。
その後、写経はお坊さんの修行の一環となり、現代では若い女性も気軽に取り組むものとなっている。
A子は「心のデトックス」と表現したが、たしかに写経のあとには爽快感がある。
いいことをしたという、すがすがしい気持ちでいっぱいになるのだ。
手書きの機会が激減している現代、一文字ずつ心をこめて書く時間は、贅沢なものかもしれない。
興味のある方にはぜひおすすめしたい。
泣ける!ぴよのちょっといい話
勝手に作った新コーナーである。
今回、ぜひ写経伝説のあるお寺を紹介させていただきたい。
新潟県胎内市にある、乙宝寺だ。
写真:乙宝寺公式HP
URL:http://oppouji.info/index.html
その昔、毎日乙宝寺にやってくる夫婦の猿がいた。
和尚が本堂でお経をあげているとじっと聞き入っている。
檀家が写経をしているときにも、その様子を熱心に眺めているのだ。
和尚がある日、「仏様に願いごとをしたいのか」と聞くと、猿は木の皮を和尚に差し出した。
しきりになにかを書く仕草をする猿に、和尚はピンときて言う。
「ここに、お経を書いてもらいたいのか」猿たちは喜んでうなずいた。
そこで親切な和尚は、木の皮に経文の一節を書いて、猿たちに渡してやったのだ。
猿はお布施のつもりなのか、木の実を和尚に渡した。
「ありがたく頂戴しましょう」和尚はニコニコと受け取った。
以来毎日、猿たちは木の皮と木の実を持って、和尚のもとにやって来た。
写経してもらった木の皮は、嬉しそうに大切に持ち帰っていったという。
しかし冬になり、雪が積もると猿たちは姿を現さなくなった。
心配した和尚と檀家の人々が山を探すと、抱き合って死んでいる猿たちの姿があった。
その手には、写経してもらった木の皮がしっかりと握られていたのだ。
猿たちの信心深さに感動した人々は寺に塚を築き、手厚く葬った。
乙宝寺は猿供養寺とも呼ばれ、現在でも猿塚が残されている。
若干「日本昔ばなし」的な雰囲気もあるが、著者はこの話はガチだと思っている。
実話だとしたら・・・
和尚ー!
いい人すぎるー!!(号泣)
猿たちも喜んだという経文。
著者も心して写経せねば。
作成者:ぴよ54