盛り塩は厄除け、魔除け。家や家族を災厄から守ります。
盛り塩の話。
玄関などに盛り塩を置けば、家や家族を災厄から守ってくれる。盛り塩は古く、奈良、平安期の昔から行われてきた慣習です。塩は穢れを祓い、清浄を取りもどすちからを持ち、穢れに起因する災厄から守ってくれるとされます。
穢れを祓い、清浄を取りもどす「塩」のパワーとは。
穢れ(けがれ)とは、生命力を減退させる忌むべき不浄。災厄はこの穢れに起因するとされます。
塩は生命を維持するために必須のもの、生命力を与えるちからがあるとされます。塩の殺菌作用も浄化としての意義があったようです。そして、なによりも神話において、伊邪那岐命(いざなぎ)が海水で身を清める説話に因るところが大きいようです。
盛り塩の起源は海水で穢れを祓う、神話における禊ぎ(みそぎ)。
記紀神話の神産みにおいて、伊邪那岐命は死んだ伊邪那美命に逢うために黄泉国(よみのくに)に行き、そこで恐ろしい伊邪那美命の姿を見ます。恐れた伊邪那岐命は逃げ出し、筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原で、黄泉国の穢れを祓うために「禊ぎ(みそぎ)」を行ないます。神社における祝詞(のりと)の冒頭で「かけまくも畏き伊邪那岐の大神、筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に禊ぎ祓えたまいしに」と読み上げられるのはこの説話。
この説話は穢れを祓う「禊ぎ」の起源譚。そこに塩とのつながりが見られます。伊邪那岐命は海に入って身を清めます。禊ぎの作法として海水を浴びる潮垢離(しおごり)が行われ、海水から精製される塩に穢れを祓う霊力があるとされて、塩は略式化された禊祓いのツールとされました。
盛り塩とは塩を山に盛りあげることが基本。盛り塩には作法があります。
盛り塩は塩を皿の上に盛りあげ、山の形に整えます。できればきれいな円錐形に整えましょう。盛り塩用の円錐や三角錐の「型」もよく使われます。そして、盛り塩に使う塩は、塩釜で作られた天日塩などが一般的。その起源を考えた場合、できるだけ天然の製法で作られた塩を使ったほうがよいようです。
盛り塩は穢れを家の中に入れないように玄関に置きます。外でも内でもかまいません。一対で置くとより効果があります。風水などでは家や敷地の四隅に置くやり方や、表、裏の鬼門と東西南北の四か所に置くといったやり方もあるようです。また、盛り塩は毎月、1日と15日に取り替えます。放置しておくと穢れを吸収して、悪しき穢れが溜まります。
(神社の魔除け)
お葬式の後、塩でお清めをすることも、穢れを祓うという神道の禊祓いの観念とされます。穢れとは忌まわしき不浄、生命力を減退させる負のエネルギー。災厄は穢れに起因します。盛り塩で穢れを祓って、災厄から家や家族を守りましょう。悪しきものを家の中に持ちこまないように。
あらき 獏(ばく)
情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。神社宮司家の家系であることで、神社縁起と地域伝承の考察や、パワースポットの研究をライフワークとしています。