世界遺産登録をめざす宗像大社と沖ノ島の三女神信仰。
世界遺産登録をめざす宗像大社と沖ノ島の三女神信仰。
宗像大社と沖ノ島祭祀
(宗像大社 辺津宮)
福岡県宗像市の宗像大社は玄界灘の孤島、沖ノ島の沖津宮、大島の中津宮、そして、宗像市田島の辺津宮の三社の総称で、朝鮮半島航路の神として宗像三女神を祀ります。2016年の春、宗像大社と沖ノ島が世界遺産候補としてユネスコに推薦されました。
宗像大社は全国7000の宗像神社、厳島神社の総本社、また、弁天さまを祀る社の総本社として信仰を集めています。祭神の宗像三女神は沖津宮の田心姫神(たごりひめ)、中津宮の湍津姫神(たぎつひめ)、辺津宮の市杵島姫神(いちきしまひめ)の姉妹神三柱の総称で、道主貴(みちぬしのむち)とも呼ばれます。
市杵島姫神を祀る辺津宮は、宗像市田島に鎮座します。本殿の裏の森には田心姫神の第二宮、湍津姫神の第三宮が鎮座して、荘厳な空気感を漂わせます。奥の山中には高宮斎場が在り、三女神が降臨した聖地とされます。太古の祭祀の姿を残す神籬(ひもろぎ)は、辺津宮最大のパワースポットとされています。湍津姫神を祀る中津宮は辺津宮の先、神湊より渡船で15分ほどの大島に鎮座します。島の北岸には沖ノ島遥拝所があり、天気のよい日には沖ノ島を望みます。
田心姫神を祀る沖津宮が鎮座する沖ノ島は玄界灘の孤島、九州と朝鮮半島の中間にあります。島全体が神域で女人禁制とされ、一般の参拝はできません。一木一草一石たりとも持ち出してはならないとされ、島で見聞したことを漏らすことも禁じられます。そして、沖ノ島からは、4世紀後半から10世紀に至る刀剣、馬具、銅鏡、玉、ガラス、磁器などが発見され、それらは国宝に指定されています。そのため沖ノ島は「海の正倉院」とも呼ばれ、それらの宝物類は辺津宮の神宝館で公開されています。
(宗像大社 辺津宮)
宗像三女神は神話においては天照大神と素戔男命の誓(うけい)から生まれたとされ、天照大神の命で天孫を助けるために、筑紫の宗像に降り立ったとされます。が、宗像三女神の航路祭祀の生成のストーリーには謎が多いとされます。
宗像三女神の祭祀は、本来、宗像あたりの航海民の祀る神が、神功皇后の三韓征伐の伝承などに拘わり、半島航路を守護する国家神として祭祀されるようになったといわれます。そして、沖ノ島の祭祀は4世紀後半に始まるのですが、沖ノ島で出土する遺跡や遺物が、中津宮や辺津宮などではみられず、古い時代には沖ノ島のみの祭祀であったともされます。また、宗像三女神を祭祀する宗像氏が大和、三輪山の祭祀氏族、大神(おおみわ)氏の系譜であるとされ、宗像に下向した大和の大神氏族が三輪山の三所(三神)祭祀を宗像に持ち込み、沖津宮、中津宮、辺津宮の祭祀としたともされます。
宗像三女神の航路祭祀の生成のストーリーの謎は奥が深いようです。世界遺産登録をめざす宗像大社で、宗像三女神の神秘に触れて、古代のロマンに浸るのもおすすめです。
宗像大社(辺津宮)
福岡県宗像市田島2331
アクセス JR鹿児島本線 東郷駅よりバス15分
公式サイトhttp://www.munakata-taisha.or.jp/
情報誌の編集者を経て、文化、歴史系フリーライター。旧神社宮司家の家系であることで、神社縁起と地域伝承の考察をライフワークとしています。