まるで呪い!? 縁切りスポットの願掛け事情
まるで呪い!?
縁切りスポットの願掛け事情
出典:photoAC
縁結びの願掛けについては、ご存じの方も多いだろう。
「○○くんとずっと一緒にいられますように☆」といった類のアレである。
縁結びスポットで見かける絵馬など、見ているだけで甘酸っぱいものだ。
一方で、実は縁切りの願掛けというものも存在する。
どんな願掛けがされているか、縁切りスポットの絵馬を見てみると・・・
「夫と浮気相手が不幸になりますように」
「○○が腐れ縁の女と別れて戻ってきますように」
「息子があの悪女と別れますように」
・・・しょっぱい。
中には、「○○が苦しみ抜いて死にますように」なんてものも。
それ、もはや呪いですよ!!
怨念が渦巻いているのを感じる・・・。
なんだか恐ろしげな縁切りスポット。
有名どころをいくつか紹介したい。
形代がびっしり・・・安井金比羅宮
全国的にも有名な縁切り神社のひとつが、京都府京都市にある安井金比羅宮だ。
こちらには、中央に人がくぐれる大きさの穴があいた巨石がある。
写真:photoAC
参拝者は身代わりのお札である形代に願いごとを書き、この巨石に向かう。
そして願いごとを念じながら巨石の穴をくぐる。
最後に形代を巨石に貼りつければ願掛け完了だ。
もともとこの巨石は絵馬の形をしているそう。
だが、石の姿がまったく見えないほど、びっしりと形代が貼られている。
縁結びの願いもあるというが、縁切り祈願の形代のほうが圧倒的に多くあるだろう。
どのような願いが書かれているのか、知りたいような知りたくないような・・・。
女性救済に尽力!東慶寺
「死んでほしい」とか「泥棒猫」(死語!)とか、物騒な願掛けが多い縁切り。
しかし、鎌倉時代から明治初期にかけての縁切りは、女性の切実な願いだった。
かつて、女性の地位が低かった時代。
女性がどんなに離婚したいと思っても、女性側からの離婚などできるはずがなかった。
夫が暴力をふるおうと借金を作ろうと、離婚は許されなかったのである。
ただ唯一、正当に女性から離婚する方法があった。
それが「縁切り寺に駆け込むこと」である。
当時は、女性救済のための縁切りの寺法というものがあった。
縁切り寺に駆け込んだ女性は保護され、寺でのつとめを数年果たせば自由の身になれる。
夫が寺法を拒否しても、現代の最高裁判所にあたる機関から離婚を言い渡され、逆らうことはできない。
もっとも、近所の目というものもある。
近所おばさんA:「○○さんところの奥さん、駆け込んだらしいわよォ」
近所おばさんB:「あら、どうしてまだ別れないのかしら?未練たらしい男ね~、ヒソヒソ・・・」
なーんて言われれば、別れないわけにもいかない(たぶん)。
縁切り寺に駆け込みさえすれば、晴れて離婚成立なのだ。
江戸時代には、そのような幕府公認の縁切り寺がふたつあった。
そのひとつが神奈川県鎌倉市にある東慶寺だ。
写真:東慶寺公式HP
http://www.tokeiji.com/map/sanmon/
こちらは明治時代初期まで、600年ものあいだ縁切りの寺法を受け継いできたという。
長きにわたり、女性たちの救済に力を注いできたお寺なのだ。
連れ戻されれば、夫にどんな目にあわされるか分からない。
女性たちは決死の思いで、このお寺に駆け込んだのだろう。
今では、緊迫した歴史が嘘のように静かな場所だ。
皇室も恐れた!縁切り榎のパワー
さて、江戸時代には、もうひとつ縁切りスポットのエピソードが残されている。
東京都板橋区にある、縁切り榎だ。
写真:photoAC
ここは嫁入りの際に通ると嫁ぎ先との縁が薄くなるとされ、古くから縁起の悪い場所とされてきた。
皇女和宮が徳川家に嫁入りする際には、縁切り榎を避けるためわざわざ迂回路を造らせたという。
中山道を通ってきた花嫁行列は、縁切り榎のあたりだけ別の道に逸れたのだ。
皇室さえ恐れる、強力な縁切りスポットだったということだろう。
庶民の間でも縁切り榎に願掛けするものは多く、何とか夫と別れたい女性はここをひそかに訪れた。
縁切り榎は、樹皮を煎じて飲ませるとその相手との縁が切れるという言い伝えがある。
女性たちは樹皮を削って持ち帰り、こっそり夫に飲ませたという。
縁切り榎にも絵馬を奉納できるが、書かれている内容はやはり生々しい。
ご利益があまりにも強いため、必要な縁まで切ってしまわないよう、具体的に書いたほうがいいという説もあるようだ。
だとしても、実名入りで「地獄に落ちろ」などと書くのはどうも・・・。
そもそも縁切りとは、悪い縁を切ってよい縁を手に入れるためのステップ。
縁を切りたい相手を呪うためのものではないのだ。
恨まず憎まずスパッと縁を切り、すがすがしい気持ちで新しい縁を手に入れたい。
~イケメン仏像コーナー~
好評(?)のイケメン仏像コーナー。
今回は、先ほどご紹介した東慶寺の、水月観音である。
そのお姿を拝見したとき、「こんなに美しい仏像があるのか!」と衝撃を受けた。
観音様には性別はないという。
しかし著者は心の中で叫んだ。
「超絶イケメン!!!」
写真:東慶寺公式HP
はりつめた気持ちで駆け込んできた女性たちは、水月観音を見て何を思っただろう。
ゆったりくつろいだお姿で、この穏やかな表情。
「オレでよかったら話聞くよ?」
(↑ここ、福山雅治さんの声でひとつよろしく)
なんて言われたらもう・・・。
こんなイケメンとしばらくひとつ屋根の下だなんて。
著者なら、毎日彼に会いに行く。
そして、時々抱きつく。(←無礼者)
悪い男につけられた傷は、いい男で癒す。
今も昔も変わらぬ鉄則である。
作成者:ぴよ54