おみくじの秘密

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おみくじが生まれる場所

「今、自分が引いたおみくじはどこで作られたのかしら」

おみくじマニアにすれば、今自分が恋の成就を祈って引いた見事大吉!の「○○神社」のおみくじは、

そこの神主様が玉串を振って祈祷し、清らかな巫女さん達がひとつひとつ折られ、

私の手元にやってきたと思いたいけれど…

私たち30代女子は「ま、外注よね。神社はご利益キープしてくれればそれでいいのよ」と

冷静なジャッジが自動的に下せるお年ごろです。

たしかにその判断は正しいです。あっています。

実はわずかな神社を除いて、多くの神社のおみくじはよそでつくられたものなのです。

でも、どこからおみくじはやってくるのでしょう。

それは、山口県周南市にある「二所山田神社」から届きます。

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山口県周南市? うーん、「るるぶ」でも見たことないわ。

それはどんな土地なのでしょう。

周南市のホームページ(http://www.city.shunan.lg.jp/)によれば、

なだらかな丘陵地が広がり、その背後には広大な農山村地帯が散在しています。また、島嶼部は、瀬戸内海国立公園区域にも指定されており、美しい自然景観を有しています。」

なんだかとっても空気がきれいなところみたいですね。

そして、なんと鶴がやってくる土地でもあるようです。

鶴渡来地は北海道だけだと思っていたら鶴はこんなところにも

飛んできてくれるのですね。

なんだか、ここから来たおみくじなら許せそう…そんな気持ちにさせてくれる場所でほっと安心。

では「なぜ山口県周南市?」なのか。

たしかにおみくじは二所山田神社で作られているのですが、

二所山田神社の神主さんと巫女さん達がせっせとおみくじを折っているのではなく、

神社がはじめた「女子道社」という会社がおみくじ製造を請け負っているのでした。

次に気になるのは「なぜ二所山田神社はおみくじを作り始めたのか?」ですね。

「女性救済」

まだまだ女性の地位が低い明治時代に二所山田神社の21代目にあたる宮司・宮本重胤氏は、

現在と比較にならないくらい社会的弱者だった女性達を

いわれなき女性差別から守ろうと生涯全力を尽くしたのです。

まず、彼の生い立ちをひもといてみましょう。

わずか三歳で父を亡くしたあと、十五歳で宮司となった

宮本重胤は母の苦労を身近で見て育ちます。

明治の未亡人なんて、本当に苦労が多かったことでしょう。

親戚知人は手のひらを返したようになり、夫が生きていたとき以上に世間の目を気にしなければいけません。

ましてや二所山田神社は毛利藩時代には御祈祷所の格に列せられる

名門(明治40年に二所神社と山田神社を合祀)ですから、氏の母君の苦労はいかほどだったでしょうか。

なぜ女性ばかりがこのような苦労を一手に引き受ける存在として許されているのだろうか、

そんな疑問が彼の心をよぎったと想像するのは難しくありません。

そして宮司の仕事にも慣れた十七歳のときに神から「女性救済」の啓示を受けるのです。

それからの重胤はすごかった。

早速、女性の自立のための全国組織「大日本敬神婦人会」を設立し、

独立を望む女性達の支援のために全力を注いだのでした。

「神道には本来女性をけがれとみなす思想はなかった(宮本重胤「婦人神職任用論」)

として、現在ですらなかなか実現するとは考えられない女性神主を推奨したほどですから驚いてしまいますね。

当然彼の活動は孤立無援ですが、なにしろ神様に「女性を助けろ」と命じられているのですから、

神の代理人宮本重胤は精力的に働きます。

しかし会を発展させ機関誌『女子道』を発刊するにも先立つものがない。

そこでひらめいた資金調達のための素晴らしいアイデアが「おみくじ」だったのです。

二所山田神社の女子道社から届くおみくじは機械で折られているのではありません。

神社のそばに暮らす女性たちによって、ひとつひとつ手折りで丁寧に仕上げられてゆくのです。

きっと、彼女たちは小さな頃から大人たちに宮司 宮本重胤について聞かされてきたことでしょう。

今、自分たちの手の中でおみくじに姿を変える小さな紙に彼の魂が

こもっていること意識せずとも深く理解していることでしょう。

私達が「大吉」ばかりに気を取られ、よく読まぬままにおわる書かれた和歌は

重胤氏が息子と1000年を越える奉仕神社の杜に夜々に潔斎をしてこもりつつ、

神前に御祈願をこめ、ご啓示をたまわって書き上げた」ものなのです。

そのように、これ以上ないほどに女性の存在のために祈られたおみくじは、

神気満ちる二所山田神社に祀られ、清めの儀式が行われた後、全国の神社仏閣へ運ばれてゆくのです。

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今、木の枝に結ぶおみくじは、女性のために

生きた一人の宮司が届けてくれたもの。

書かれている言葉の一つ一つが彼からの励まし、

そのように受け止めてみるとこの一枚の紙がくれる意味の大きさに打たれます。


 

作成者:2niteuser

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